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かぼちゃを塩で煮てみた。

 

風邪気味で、頭の中が低いうなり声をあげていた時。

冷蔵庫にかぼちゃがあることを思い出した。

「あ、塩で煮たやつが食べたい」

 

なんのことはない簡単なレシピ。

かぼちゃをちょうどいい大きさに切って、

鍋から顔を出さないくらいの水を入れ、

塩を適量入れる。(すべてじぶんのさじ加減というところがいい。)

あとは、沸騰したら

落し蓋をして弱火でくつくつ煮る。

 

単行本をキッチンに置いて

ことばの通りに進行する。

なんだか、やさしいな。

数字がないからかもしれない。

 

 

水分がなくなって

ぱちん、と爆ぜるような音がしたら

すかさず火を止める。

 

いい色のかぼちゃ、待ち切れずに

あつあつをお皿に取り分けて、いただく。

 

 

「え・・・なにこれ?! おいしい・・・」

 

 

牧野さんという方のレシピを侮ってはいけなかった。

実験気分でやってみただけなのに・・・

塩で煮ただけなのに・・・

 

かぼちゃはあまじょっぱくて、

それも、ほっくほくで、

懐かしいような味がして、

風邪のことなんて頭からふっとばす威力を持っていた。

 

かぼちゃって、こんな風にもなるんだ・・・。

 

これは、単行本のタイトルにしたくなるよなあ、なんて

勝手なことを思う。

かぼちゃの塩煮、おいしかった。

 

 

バナナに火を絡めて焼く「バナナフランベ」。

パンとチーズとリンゴとハム、おかずは4種類の「アメリカの弁当箱」。

いろいろなおかずを気ままにお皿に置くだけの「ちゃつ」。

 

名前もとっても可愛らしくて魅力的だし、

すべては「おいしさ」にまっしぐらだ。

「食」という欲望を、神聖なものに変えてしまったようだ。

いやらしさがまったくなくて、

読んでいるうちに身体がほかほかしてくる、特別な本。

 

 

これは牧野さんという方の生き方であり、

知性のある知恵がなす業だと思う。

 

 

 

 

「かぼちゃを塩で煮る /  牧野伊三夫」